1年3ヶ月ぶりにビットコインが1万ドル回復ということで久しぶりにメディアを賑わしています。個人的には投資(投機)対象としては見ていないのですが、実際にやってみないとわからないこともありますので、少額ですが、ビットコイン、アルトコインと言われるイーサリアム、リップルなどを保持しています。
ブロックチェーンの仕組みに興味があり、2年ほど前に「ブロックチェーン・レボリューション」を読了した時には、読書メモに「これはきた!これから数年自分の追いかける技術はこれだと思った。インターネットが変わる、そして、社会が変わる。」と熱く残していました。
ブロックチェーン・レボリューション ――ビットコインを支える技術はどのようにビジネスと経済、そして世界を変えるのか
- 作者: ドン・タプスコット,アレックス・タプスコット,高橋璃子
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2016/12/02
- メディア: 単行本
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この本は若干堅いところもあるのですが、ニューヨークタイムズの記者である著者(ナサニエル・ポッパーさん)が、2009年から2014年にかけて世界中のビットコイン関係者に直接取材を行い、その真相について掘り下げたルポタージュである「デジタル・ゴールド--ビットコイン、その知られざる物語」は読みやすく、なかなか興味深い物語です。
- 作者: ナサニエル・ポッパー,土方奈美
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2016/09/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ビットコインの誕生とそれが世の中に認識されるまでの物語です。記録に基づく実話なのですが、確かに事実は小説より奇なり、だなと思ってしまいました。。小説として読んでも楽しめるでしょうし、何故ビットコインが必要とされたのか、貨幣とは何なのか、インターネットの登場に匹敵するインパクトを持つ革命と言われる理由がわかってくる物語でもあります。
(2019年1月に読了となっている本で、大分前に読んだつもりだったのですが、実は意外に最近読んだ本だったのだと勝手に驚いています。。)
ビットコインはその仕組みを支えるブロックチェーンというシステムの部分が注目されますが、確かにそれはそれであるのですが、元々は思想的、イデオロギーに支えられていたものだったと思います。それを実現するための手段として産まれたのがブロックチェーンと。
ビットコインの世界の初期の参加者であるハル・フィニーさんがサトシ・ナカモトのメーリングリストにおけるビットコインの説明で最初に感銘を受けたのは以下のポイントでした。
ビットコインはどこかの管理主体に身元情報を提供しなくても保有や取引ができる点だ。
ハルさんには金銭的なものへの頓着はなかった言われており、以下のような投稿もされていたようです。
「僕らが今ここでしているのは、広い意味では"ビッグブラザー"を過去のものにするという目標に沿った活動だ。」
オーウェルさんの「1984年」のビックブラザーですね。
- 作者: ジョージ・オーウェル,高橋和久
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2009/07/18
- メディア: ペーパーバック
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また、当時のビットコインのサイトに書かれた内容は、以下のような政治的理由も書かれていました。
独裁的な中央銀行の不公平な通貨政策をはじめ、通貨供給を中央集権的権力に握られることから生じるさまざまなリスクから身を守ろう。ビットコイン・システムの通貨供給の拡大には制限がかかっており、しかも金融エリートに独占されることなく、(CPUの性能に応じて)ネットワーク中に均等に分配される。
サトシ・ナカモト自身もビットコインを、
ユーザが中央権力機関に頼らずにすむ「信用不在のシステム」
と謳っています。
今のビットコインの位置づけを考えると、この頃の思想が全て純粋に残っているものであるとは思えませんが、ビットコインの立ち上げの背景にあったイデオロギー、政治的な部分を知るとまた見方が変わってきます。この物語で描かれているのは2014年までです。
さて、今後ビットコインはどのように使われていくのでしょうか。個人的には、決済手段としての普及に関してはダウトです。いろいろな立場の人たちがビットコインを資産として捉えているのではないかと考えています。金と同様に世界中どこでも入手でき、貯蔵できるデジタル資産としてです。
私自身本職はシステム側の人間ですので、ブロックチェーンの仕組み自体にも非常に興味があります。単一障害点のない水平分散型のシステムでP2Pのシステムというとこはもちろん興味深いのですが、そのシステムの成功を支えている「市場原理」の概念というものをサービス(システム)のスキームに取り込んだアーキテクチャに特に惹かれました。
システムですので、欠陥というものは出てきます。また、運用上のシステム欠陥というものもあるでしょう。それをついて誰かが暴利をむさぼることができるかもしれません。過去ビットコインの仕組みの中でもそういうものが発見され、かなりヤバイ状況もありましたが、破綻することなく、これまで世の中から消えることなく、「信頼された」システムとして生き残っています。それは、サトシが概念として入れていた「市場原理」に依ります。
アルトフォルツがこのバグを攻撃しなかったことは奇跡に近い。ただシステムにもそうしたふるまいを促すインセンティブがあった。アルトフォルツも、ラースローが先鞭をつけたGPUでの採掘をしており、システムへの信頼が揺らげば保有するコインが無価値になるとわかっていた。想定どおり市場原理が働いたわけだ。
結局、欠陥をついて不正を行った場合、最終的にはシステム自体の信頼が揺らぎ自分達にも不利益が被られるということですので、敢えてわざわざそういうことをしないというストッパーが自然に働くんですね。
またサトシ・ナカモトがネットワークに組み込んだインセンティブは、またしてもネットワークの参加者に目先の個人的利益より共通の善を優先するよう促すという期待通りの効果を発揮した。
ビットコイン、それを支えるブロックチェーンの生みの親、サトシ・ナカモトさんが誰なのか未だにわかっていません。2010/12/12 にフォーラムに残した最後の投稿から姿を消しています。2009年に運用が開始されてから10年、ビットコインは成長を続けています。創始者がわからないという不思議な状態でも信頼のあるシステムとして成長を続けるビットコインのプラットフォーム。今後どのように使われていくのか、世の中の変えていくものとなるのか、現在進行中の出来事に参加できていることを幸せに思います。。